親の介護は、ある日突然、仕事や暮らしの予定を変えることがあります。
通院に付き添いが必要になり、物忘れや体力の低下が気になる。介護の相談や手続きを進めたい。入院や退院に合わせて勤務調整が必要になることもあります。仕事を何日休むことになるのか、まだ見通せない段階では、会社に何を伝えればよいのでしょうか。
まず伝えたいのは、介護で必要になった対応と、仕事を休みたい日・時間の見込みです。先の予定がまだ分からなくても、その時点で分かっていることから相談できます。
通院の付き添いなどで日・時間単位の休みが必要なら「介護休暇」、介護の体制を整えるために一定期間休みたいなら「介護休業」が候補になります。ただし、使える条件や給与・給付金の扱いは同じではありません。会社への伝え方と合わせて、休み方を選ぶために必要な違いを整理していきます。
会社には「今必要な対応」と「休みの見込み」を伝える
「親の介護で休みます」だけでは、職場も予定を調整しにくいかもしれません。親の状況をすべて説明するより、仕事への影響が分かるように伝えると、具体的な相談につながります。
- 親にどんな支援が必要になり、自分が何に対応するのか
- いつ、どのくらい休む見込みか。未定の部分は何か
- 休暇・休業や勤務時間について、何を相談したいか
上司や人事へ相談するときは、例えば次のように伝えられます。
親の通院への付き添いと、今後の介護についての相談・手続きが必要になりました。直近では通院日に休みを取りたいと考えています。その後も平日の対応が必要になる可能性がありますが、日程はまだ未定です。利用できる介護休暇・介護休業と、勤務時間の調整について相談の時間をいただけますか。
これは最初の相談の文例です。休みたい日が決まっていれば、連絡の際に具体的な日付も伝えます。介護休業の正式な申出には、開始日・終了日などを記載した書面等が必要になるため、人事から申請方法の案内を受けましょう。
長く休むか決まっていなくても、制度の説明は受けられる
2025年4月から、家族の介護に直面したと申し出た労働者に対し、会社が介護休業などの制度や申出先、介護休業給付金について個別に知らせ、利用の意向を確認することが義務になりました。
そのため、相談前に自分だけで制度を選び切る必要はありません。「休み方も含めて相談したい」と伝えられます。利用しやすい職場環境の整備や、介護に直面する前の40歳の時期等での情報提供も、会社に義務づけられています。
相談後は、急ぎの仕事を誰に引き継ぐか、次にいつ状況を共有するかも決めておくと、その後の連絡がしやすくなります。
付き添いのための休みか、介護体制を整える休みか
介護休暇と介護休業は、名前が似ていますが、使いどころが異なります。まずは「次の通院に付き添いたい」のか、「退院後の生活を整えるために一定期間必要」なのかを分けると、相談する制度が見えてきます。
| 比較すること | 介護休暇 | 介護休業 |
|---|---|---|
| 利用場面の例 | 通院の付き添い、介護サービスの手続き、ケアマネジャーとの打ち合わせ | サービスや家族の分担など、働きながら介護に対応する体制を整える |
| 法定の日数・回数 | 対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日まで | 対象家族1人につき通算93日、3回までに分けて取得 |
| 取得単位 | 1日または時間単位。時間単位取得には業務による例外あり | 休業する期間を定めて申出 |
| 給与・給付 | 有給・無給は会社の規定による。介護休業給付金の対象ではない | 給与の支払い義務はなく、会社の規定による。別途要件を満たせば介護休業給付金の対象 |
表は法律上の基本的な枠組みで、会社がこれを上回る制度を設けている場合もあります。介護休暇の「年」の区切りや、これまでの取得日数も、人事に聞いておきたいところです。
要介護認定がなくても、対象になる場合がある
どちらも、対象家族が法律上の「要介護状態」にあることが前提です。病気やけが、身体・精神上の障害により、2週間以上にわたって常時介護を必要とする状態を指します。
介護保険の要介護認定を受けていることが、必須条件ではありません。厚生労働省は、歩行・食事や認知・行動面などの状態を確認する判断基準も示しています。「2週間以上」とは常時介護が必要な状態の期間を指し、自分が2週間以上休む必要があるという意味ではありません。
自分の父母に加え、配偶者の父母も対象家族に含まれ、同居している必要はありません。ただし、入院や退院への付き添いならどのような場合も対象になる、という制度ではないため、親の状態と必要な対応を会社に伝えて判断を確認します。
参照:厚生労働省「よくあるお問い合わせ(事業主の方へ)」「Q&A~介護休業給付~」
入社したばかりの場合は、休暇と休業の条件を分けて聞く
介護休暇では、2025年4月から、勤続6か月未満を理由に労使協定で対象外とする仕組みが廃止されました。一方、週の所定労働日数が2日以下の場合は、現在も労使協定によって対象外となることがあります。
時間単位の取得が難しい業務についても、労使協定で時間単位の取得だけを除外する場合があります。この場合でも、1日単位の介護休暇は取得できます。
介護休業には別の条件があります。日々雇用される人は対象外で、勤続1年未満、申出から93日以内に雇用関係の終了が明らか、週の所定労働日数が2日以下の人は、労使協定によって除外される場合があります。介護休暇も日々雇用される人は対象外です。
有期契約の場合はさらに、申出時点で、介護休業開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約が満了し、更新されないことが明らかでない、という要件があります。「パートだから使えない」と雇用形態の名前だけで決まるわけではありません。
参照:厚生労働省「法改正のポイント」「介護休暇」「介護休業」
介護休業は、希望する開始日の2週間前までの申出が基本です。直前に申し出た場合は希望どおりの日から開始できないこともあります。急に翌日から休む必要が出た場合は、介護休暇や年次有給休暇、会社独自の休暇など、直近の対応を人事と相談することになります。介護休暇は口頭での申出も可能です。
休める日数と、休んだ間の収入は別に考える
休みが取れると分かっても、給与がどのくらい減るのかで選び方は変わります。介護休暇は年次有給休暇とは別の制度で、名前に「休暇」とあっても、有給とは限りません。
法律上、介護休暇で働かなかった日や時間に対して、会社が給与を支払う義務はありません。有給にするか無給にするかは、就業規則などの会社の規定によります。介護休業についても給与の支払い義務はなく、会社が独自に支払う場合があります。
人事には「この休み方で給与はいくら減るのか」「賞与の算定はどうなるか」「ほかに使える有給の休暇はあるか」をまとめて聞くと、家計の見通しを立てやすくなります。
参照:厚生労働省「よくあるお問い合わせ(事業主の方へ)」「よくあるお問い合わせ(労働者の方へ)」
介護休業給付金は、自動でもらえる給与の代わりではない
雇用保険に加入して介護休業を取る人は、要件を満たせば介護休業給付金を受けられます。ただし、休業を取得できる条件と、給付金を受けられる条件は別です。介護休暇や、単に家族の介護を理由に欠勤した日が、そのまま給付の対象になるわけではありません。
主な受給条件として、次の点があります。
- 原則、休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12か月以上あること。これで12か月に満たない場合は、賃金支払基礎時間が80時間以上の完全月も数えます。
- 各支給単位期間の就業日数が10日以下であること。休業終了日を含む期間は、全日休業した日が1日以上あることも必要です。
- 各支給単位期間に、算定の基になる休業前賃金の80%以上の賃金が支払われていないこと。
本人の疾病などで受給要件が緩和される場合や、有期契約に関する追加要件もあります。過去の雇用保険の受給歴を含め、対象になるかは会社の担当者やハローワークで確認できます。
支給額は原則、休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%。手取り給与の67%という意味ではなく、賃金日額は原則として休業前6か月の賃金から計算されます。同じ家族について、給付の対象となる休業は通算93日・3回までです。
休業中に賃金が支払われる場合、賃金と給付の合計が算定基準額の80%を超える分は減額され、賃金だけで80%以上になると不支給になります。また、計算に使う賃金額や給付には上限があり、限度額は毎年8月1日に見直されます。自分の休業期間に適用される額を確かめてから、収入の見込みに入れたいところです。
参照:ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付・介護休業給付について」
申請は原則として会社を通して行いますが、本人が希望すれば自分で申請することも可能です。通常の提出期限は、介護休業終了日(休業が3か月を経過したときは休業開始日から3か月を経過した日)の翌日から起算して2か月を経過する日が属する月の末日までです。
給与と同じ日に振り込まれるとは限らないため、担当者には申請予定も聞いておきましょう。なお、この給付は職場復帰を前提とし、休業当初から退職を予定している場合は対象外です。
参照:厚生労働省「Q&A~介護休業給付~」、ハローワークの申請手続き案内
会社への相談と並行して、介護側にも働き方を伝える
会社との調整だけでは、平日の付き添いや自宅での介護がどう回るかまでは決まりません。介護の相談先にも、自分の勤務時間や通える頻度を伝えておくと、必要な支援を具体的に検討できます。
高齢の親の生活や介護について、まだ相談相手がいない場合は、親が住んでいる地域を担当する地域包括支援センターが入口になります。すでに担当のケアマネジャーがいるなら、まずその人に、仕事と重なる時間帯の対応を相談できます。
「平日の昼間は仕事で不在です」「通院のたびに丸1日休むのは難しいです」といった具体的な情報も、介護の計画を考える材料になります。利用できるサービスや空き状況、費用は地域や親の状態によって異なるため、希望する支援がいつから使えるかまで聞いておきたいところです。
参照:厚生労働省「家族介護に直面している方への支援を知りたい」、厚生労働省「仕事と介護の両立ポイント」
入院中なら、病棟の看護師に、退院後の生活を相談する窓口を尋ねる方法もあります。例えば滋賀県立総合病院では、退院支援担当者が関わり、必要に応じてケアマネジャー等と情報を共有して在宅サービスを調整しています。担当部署の名称や進め方は病院によって異なります。
親の状態から相談先を選びたい場合は、家族の介護の相談先と制度の入口を、状態別に整理した記事で詳しく扱っています。
休むだけでなく、働く時間を変えられるか
介護が続く場合は、休暇を増やす以外の調整も候補になります。会社には、短時間勤務、時差出勤、残業の免除・制限などについて、対象条件と申出方法を聞けます。
短時間勤務等については、会社に、短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤・介護費用の助成などのうち、いずれかの措置を設ける義務があります。どの会社でもすべて選べるわけではなく、利用条件にも違いがあります。
2025年4月からは介護のためのテレワークも事業主の努力義務となりましたが、希望すれば当然に利用できるという意味ではありません。通勤の負担を減らしたいのか、特定の時間に家を空けられないのか、必要な調整を具体的に伝えて相談する形になります。
制度を使えないと言われて理由が分からない場合や、申出・取得を理由に退職を迫られるなどの場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ相談できます。介護休業等の申出や取得を理由とする解雇・降格などの不利益な取扱いは禁止されています。会社に伝えた内容と返答を残しておくと、相談時に経緯を説明しやすくなります。
例えば、親の退院に合わせて休みが必要になったら
ここからは説明用の架空事例です。実在の相談者の体験ではありません。
平日勤務の会社員が、親の退院の付き添いと、その後の通院・介護サービスの調整を担うことになったとします。退院日は候補が出ていますが、サービスの開始日はまだ分かっていません。
この段階では、会社に「退院当日と、平日の打ち合わせで休みが必要になる見込み」を伝え、介護休暇や年次有給休暇を含む休み方を相談します。同時に病院の担当者や地域の相談先に、退院後にどの支援が必要で、いつから利用できるかを尋ねます。
調整に一定期間必要と分かれば、介護休業の対象条件と開始時期、給付金を検討。反対に、必要な対応が特定の日・時間にまとまるなら、介護休暇と勤務時間の調整を中心に考える方法もあります。
これは考え方の例であり、休暇・給付金の利用可否、会社の対応や退院日を保証するものではありません。「まず休みの見込みを伝え、介護側の予定が分かったら相談を更新する」という流れです。
仕事を辞めるかは、休み方と支援の見通しを並べて考える
休暇や勤務調整を使っても、両立が難しい場合はあります。仕事を続けることだけを正解にする必要はありません。
退職を考える段階では、親に必要な支援のうち自分が担う内容、家族やサービスに頼める範囲、休業・勤務調整を使った場合の収入を並べてみると、判断の材料が増えます。退職した場合の生活費も含め、家計が続く見通しと、自分の体調を合わせて考えたいところです。
介護に加えて自分の病気や体調不良で働けない事情がある場合は、確認する制度も変わります。その場合の周辺情報は、働けなくなったときに退職前に確認したいお金と制度の記事に整理しています。(ただし、親の介護だけを理由に、その記事の給付がすべて使えるわけではありません)
最初の連絡は、分かっている予定から
親の介護で仕事を休むときは、介護のすべてを見通してから会社へ話す必要はありません。まず必要な対応と休みの見込みを伝え、制度の案内を受けるところから始められます。
- 会社へは、介護で対応すること・休みたい日や時間・未定の部分を伝える
- 介護休暇と介護休業は、用途・対象条件・給与や給付を分けて確認する
- 介護の相談先にも働き方を伝え、サービスと家族の分担を調整する
今、会社へ連絡するなら、最初に示した文例のうち、自分の状況に合う内容だけを残せば相談の土台になります。「休みたい日がある」「その先はまだ未定」という段階でも、次に何を確かめるかを一緒に決められます。
制度情報の確認日:2026年10月12日。この記事は主に民間企業で働く方を想定した一般情報です。個別の対象可否や手続きは、勤務先、ハローワーク、都道府県労働局など、それぞれの担当窓口へご確認ください。
